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2016/04/30

 放浪を続ける男は夢を見ていた。大戦後、衰退しつつもほそぼそと生きる人々の町が、突如再起動した過去の遺物たちによって崩壊し、血の海が浮かぶ様子を。男は、身を蝕む病に膝をつきながら、世界を救う手立てを、その夢の中で見た。この物語はかつての栄華を失い、多くの技術が埋没した世界で、過去を保存しながら旅を続ける放浪者(ドリフター)の物語。



 Hyper Light Drifter(以下HLD)はクラウドファンディングサイトKickstarterにて立ち上がったプロジェクト。登場とともに、予定を上回る資金がまたたく間に集まった注目作品だ。数々の苦難を乗り越えながら見事発売を果たした本作品をレビューしたいと思う。

 合計プレイ時間は19時間ほど。見下ろし型のサードパーソンアクションゲーム。
 シングルゲーム(ただしローカルではCOOPあり)。全体の流れとしては広大なマップ自由に行き来しながら、各ダンジョンを攻略し、謎を解き、敵を撃破し、時には自身を強化しながら、モノリスの起動を目指すというもの。

世界には失われた過去の遺物が多数放置されている


 基本操作は剣による攻撃、素早いダッシュ、銃による射撃の三点。
 HLDは簡潔にいえばハードな『ゼルダの伝説』系列といった説明が適切だろう。前記したようにゲームの目的は各地に眠るモノリスの起動なのだが、ここに至るまでに存在するダンジョンの難易度は異様に高く、またトラップも目が回るほど多い。敵モンスターの配置もいやらしく、基本的に戦闘が“多勢に無勢”となりがちな点も難易度の高さを物語っている。トラップとモンスターの大群の合わせ技も少なくはない。雑魚がただの雑魚では終わらず、ボスモンスターのように、ある種の攻略方法抜きには無傷で済まない点も、難しさに拍車をかけている。ドリフターの体力も低い。


スキルは戦闘や探索で入手したポイントをお店で消費して習得する


 これらを打破するために、キャラクターには「強化」と「スキルの習得」という救いがあるのだが、劇的にプレイ感が変わるものでもなく、またスキルは連射し続けることができず、ともすればスキが大きくなり、予想外の痛手を負うことに繋がり易いため、ゴリ押しがしにくく、ゲームの攻略はもっぱらユーザーの手腕に委ねられている。
 やや高すぎる難易度のように思えるが、しかしどうしてか、バランスは非常に良い。

銃の強化は弾薬が増え、戦闘効率が上がるので優先したいところだ

 HLDはまれに見るような、気が狂ったような難易度のゲームではない。プレイヤーの不快感にしかなり得ないような設計のゲームでもなく、開発陣の嫌がらせとしか感じないゲームでもなく、攻略方法と打開するための道がきちんと設計されている。
 ゲームオーバーにペナルティはなく、死亡しても少し前の部分に戻って挑戦できるという点や、そのステージが嫌になれば、いつでもワープして始まりの町に帰ることができるといった点も開発陣の気遣いであろう。
 敵も一度倒せば、“条件を満たさなければ”復活しない部分も嬉しいところだ。 回復アイテムも異様に多く、要所には必ず置かれている。

スピーディーな戦闘は攻略法も絡まり、かなりの面白さ


 デザインは16bitフューチャーながらも味があり、敵やエフェクトがよく動く点も見ていて飽きない。ゲーム中に言語が存在せず、キャラクターの動きや、映像で物語を語らせている部分も興味深かった。退廃的な印象のサウンドも素晴らしく、先日ローカルCOOPも導入された。

人類が獣人に敗北した世界


 難点は、ゲームの進行がユーザーのプレイスキルに頼られるため、ユーザー自体が苦手とする場面に遭遇した場合、なかなか抜け出せないことになり易いという部分だろうか。
 また、ダンジョン含め、多くの隠し部屋、隠し通路が多数存在しており、これらの探索がゲームに若干の冗長を感じさせる。 気にしなければさくさくと先に進めばいいのだが、隠し通路の先には有効なアイテムに繋がる“もの”があったり、強化に使用するポイントが入手できるということもあり、なかなか無視はできない。何度もダンジョンをプレイするというリプレイ性に繋がるとは思うものの、テンポよく攻略を進めたいといったプレイヤーにはストレスとなるかもしれない。
 また、物語を明確に語らないが故に盛り上がりに欠け、淡々と進行してしまうため、世界やキャラクターへの愛着を持ちにくい部分も問題のように思えた。
 コントローラに限りボタン変更ができない点、キーボードとコントローラーの一長一短あるプレイ感、バグなど細かい不満点はままある。

 HLDはそれでも楽しいゲームだ。当時、『ゼルダの伝説』に興奮した子供が、大人になり再び『ゼルダの伝説』をプレイしても、そこには懐かしさはあれど、喜びや興奮ややりがいはあまり感じられない。そんな大人に向けて、もう一度、あの時に感じた喜びや興奮を届けてくれるゲームがHLDではないだろうか。
 

没入感:低い
ストーリー:普通
グラフィック:高い
戦闘の魅力:非常に高い
リプレイ性:普通
PC負荷:低い
問題:盛り上がりに欠ける部分、やや多めな隠し要素
総合:8/10

2015/09/22


2015年5月28日にSteamにてリリースを迎えた『Homesick』はクラウドファンディングサイト(出資者による資金提供を受けて製品等を実現するサイト)Kickstarterにて持ち上がったゲームプロジェクトだ。先日、本作品をプレイする機会があったため、レビューをしたいと思う。

(本レビューはネタバレに触れます。ご注意ください)

 プレイ時間は2.5時間ほど。 ファーストパーソンビューの3Dパズルアクション。
 目が覚めると男は無人の廃墟にいた。周囲には人はいない。男は自分の身に何が起こったのか、どうして自分はそこにいるのかを探りながら、廃墟から脱出を目指す……という展開でゲームは進行していく。

廃墟のモデルは美しい

 廃墟の高い階層で目覚めたプレイアブルキャラクターは、ある理由により強い陽の光に当たることができないという特徴を持つ。そのため、通常であればすぐに渡れるような道であっても遠回りをせねばならず、脱出には「闇の世界」で行動しなければならない。
 「闇の世界」とは通常世界を指す「光の世界」で“ある”フラグを立てることで、移動可能になる世界で、そこでは陽の光が差さないため、進むことができなかった道を歩き、「光の世界」で邪魔であったモノを移動させたり、カギの掛かっていた扉のロックを解除するといった行動を取ることができる。こうすることで目覚めた時にゴールへと進むことができるようになるのだ。むろん「闇の世界」でも自由に行動するためには「光の世界」で、障害を取り除くという相互作用的な仕掛けが存在する。
  ちなみに、闇の世界ではプレイヤーを追うようにして地面から闇が吹き出し、これに捕まると元の世界に戻されてしまうので、ゆっくりと考えている時間はあまりない。
 
日差しを避けて進むというのがこのゲームのパズル要素

  上記の仕掛けの説明は一切なく、チュートリアルやヒントといったものはほぼ皆無だ。プレイヤーはそれこそ、手探りでゲーム内の情報をかき集め、目的やキャラクターの状況を知っていく必要がある。
 この「遊び方を知る」という点も本作の楽しみのひとつなのだが、どうしてもレビュー内で触れざるをえなかったためネタバレ注意の喚起をした。

 閑話休題。

 ホラーゲームを思わせる廃墟という舞台装置と、旧バージョンであるUnreal Engine3の美麗なモデリングは真っ先に『バイオハザード』や『サイレントヒル』を想像させたが、終盤までゲームはパズルとして進行していく。パズルは上記したように光と闇のふたつの世界を補い合うようなギミックでもって進行していくもので、理性的かつ合理的な内容のため、違和感はなかった。またゲーム内の美しくも退廃的なBGMは心地よく、写真を取り込んだような美しいモデリングは、眺めているだけでも心地よいものだった。

文章はある理由により暗号化されている


 しかし、ゲームとして考えた場合、決してオススメできるものではない。
 まず、パズルがどれも似た内容になっていることが挙げられる。終盤こそ、変化球めいたものが出てくるものの、やはり大筋は変わらず、同じことを繰り返しているような感覚はどうしても拭えない。「夜の世界」に関してはビジュアル的なインパクトを重視しているだけであって、実際問題いくらでも避けられる闇が吹き出すギミックは冗長にしかならない。また、それなしでは退屈なゲームであることは誰の目に見ても明らかという点は、根本的に『Homesick』というタイトルが不完全であることの証だ。
 これがもし中盤からにせよ(またチープになるにせよ)クリーチャーが出るといったものであったなら、驚きと緊張は継続できたはずだ。

吹き出す闇もチープだ


 ビジュアル面も流石に古くなったUnreal Engine3では、どうしても綻びが見えてしまう。物語の結末やストーリーをプレイヤーに投げたままで終わっている点や価格に対して非常にボリュームが少ない点も、気になるところだ。
 廃墟が好きであり、一風変わったパズルが好きであり、物語やゲーム性を別段重視しないのであれば、このゲームはふさわしいのかもしれない。



没入感:普通
ストーリー:低い
グラフィック:やや高い
戦闘の魅力:存在しない
リプレイ性:非常に低い。
PC負荷:普通
問題:圧倒的なボリュームのなさと代わり映えしない内容。
総合:3/10

2015/05/31


 前作から一ヶ月後……アウトブレイクによる混乱はついに政府や軍事機能ならず通信をも麻痺させ、ヨーロッパ連合を崩壊させるに至った。生き残った幸運な 民間人や、傭兵部隊は皮肉にもアウトブレイクを引き起こしたHorzine Biotech社から支払われる賃金と物資を糧に、ホットスポットに身を投じる。

 絶大な人気を誇るKFの次回作が満を持して登場した。現状はまだアーリーアクセスではあるものの、レビューを行いたいと思う。

 合計プレイ時間は15時間ほど。ファーストパーソンビューのマルチプレイシューティングゲームだ。
 1ゲームの最大参加人数は6人まで。全体の流れとしてはWAVEごとに膨大な数の敵がプレイヤーたちを目標に襲撃してくるため、これを撃破しながらポイント(賃金)を稼ぎ、WAVEとWAVEの間に開かれるショップで装備を整えつつ、ボス攻略を目指すというものになる。

ゴアが増し、グラフィックは劇的に進化している


 前作は敵の攻撃や行動が非常に規則的で、3Dのタワーディフェンスゲームをプレイしているかのような感覚が強く、プレイヤーに求められるスキルはもっぱ ら「正確なヘッドショット」と「正しい敵の対処方法」であり、ボス戦を除けば、プレイヤー間の協力プレイはあまり感じられるものではなかった。
 やや、強引な断定になるが、上記スキルを熟知しているプレイヤーは、他のプレイヤーがいなくても困るということがない。敵の行動が規則的なら、問題とすべきところは自分のミスであり、その点は尚の事といえる。

UIもキレイになり分かりやすくなった


 本作はその点を乗り越えようとしている。
 まず、敵の出現ポイントが至る所に置かれるようになり、その出現ポイントは死角をついた場所であることが多く、乱戦が多発するようになった。そのため、プレイヤー間の結束と互いの必要性が無意識に高められている。
 また、区別がつきにくいが、一見すると最弱の“Colt(以下クロト)”に見えるものの、本作から追加された“Cyst”や“Slasher”は、クロ トとは行動パターンや移動速度がまったく異なるため「クロトはこの速度で近づいてくる」といった思考や「クロトは、こういったパターンで動き、この距離ま で近づくと反応する」といったゲームに規則性を見出そうとするプレイヤー心理を混乱させやすく、見事に固まって行動するチームの連携やテンポを崩す要因の ひとつになっている。

キャラクターの服装や小物は細かく変更できるようになった


 その他にも、スペシメンの行動パターンや攻撃速度、耐久性が強化され、ヘッドショットの重要性が低下した点は、イコールで「目の前の敵をいかに早く処理するか」という部分にスポットが当てられるようになったため、マシンガン系の武器の取り回しが増した。
 マップも開けた場所が増え、前記した出現ポイントの増加もあり、一箇所に固まって行動するといった“篭もり”を行いにくくなっている。

 それぞれのパーク(クラス)の特性が強化され、パークごとの立ち回りや役割をきちんと演じることがチームの生存率を劇的に変化させるようになった。ま た、パークのレベル上げも前作の「特定の行動を~回行うことでレベルが上がる」といったものから、特定ジャンルの武器ないしアイテムを使用することで必然 的に経験値が貯まり、レベルが上がるといった形に変わり、レベル上げが格段に行い易くなっている。

今作もマネーをばらまくシステムは健在


 やや小さくなり、脅威感がなくなった雰囲気のある今作のボスはチームを分断する攻撃や、接近戦をしにくい行動を取るため、集団で高火力武器による圧殺と いった前作の定形は行いにくくなり、地道に体力を削る必要性を求められるようになったのところも、ゲーム感が増していて面白い。グラフィックも強化され、 いつまでもスペシメンの血肉がステージに残り続けているというも雰囲気がある。ユーザーインターフェースも分かりやすくなった。

小柄ながらも強力なマップ兵器を駆使するボス


 KF2は順当に前作の問題点を修正し、洗練し、ユーザーの求める解答を提示しているといってもいい。これは正しいアップデートだ。

 しかしながら、前作を遊び倒した熟練のプレイヤーには「まだ篭もりを行えるスポットがある」といった点や「劇的に変わるような変更点はない」といった点 は気になるところだろう。確かに、新作と呼べるほどの変更点はないかもしれない。しかし、確実にユーザーが求めるべき変更は“多数”あったという部分は評 価すべきところだろうし、雰囲気を継承しているという言い方は許されるはずだ。


没入感:普通
ストーリー:普通
グラフィック:やや高い
戦闘の魅力:普通
リプレイ性:高い
PC負荷:普通
問題:前作と同じスタイル、同じゲーム感。
総合:8/10

2015/02/23


 開拓中のある惑星が今様に放棄されようとしていた。原因はその惑星に住む怪物たちだった。取り残された生存者を宇宙に逃がすため、わずかな時間をかけてハンターたちは武器を手に取り、戦う。

 今回は名作L4Dを作り上げたTurtleRockの最新作Evolve(以下エボルブ)のアルファテスト、ならびにクローズドベータのインプレッションを解説を含めながら紹介したいと思う。

 ※このレビューはAlphaとBetaのものです。また、本稿はゲームモードHUNTのみの感想です。

多くの賞を受賞したことは記憶に新しい


 合計プレイ時間は50時間ほど。 ファーストパーソンビューのプレイヤーバーサスプレイヤーアクション。
 全体の流れとしては5人のプレイヤーが、モンスター側と四人の人間側に分かれて、広大なマップで戦闘を行うというものになる。モンスター側の勝利条件はプレイヤーが全員死亡すること、もしくは人間側の拠点を破壊すること。人間側の勝利条件はモンスター側の死亡か、リミットタイムまで生き残ること。

想像以上のスケールをもつモンスターのひとつ“ゴライアス”


 それぞれの特色として、まずモンスター側は総じて人間側とは比較にならないほどのパワーを持っている。また、モンスターごとの固有能力を除き、基本的なスキルとして、現地生物を一定数捕食することで、進化(エボルブ)し、いちじるしく己を強化することができる。他にも壁越しからの位置把握、足あとを消すスニークや食事によって回復するシールド、孤立したプレイヤーを捕獲しダメージを与え続けるスニークアタックなど多彩なアクションを持っている。重要な点は一度死んでしまえばゲーム終了ということ。
 人間側の特色としては、それぞれが高火力高耐久度を持つアサルト、絡め手と遠距離支援を得意とするサポート、唯一モンスターの行動範囲を制限し小さな空間に閉じ込める能力を持つトラッパー、唯一仲間を回復する手段を持つメディックの4つのクラスに分かれ戦闘を行う。基本的なスキルとしてどのキャラクターもジェットパックを背負っており、自由に飛び回りながらマップを駆け抜けることができる。また、チーム間でマップ上に注意を示す「スポット」がある。重要な点はプレイヤーがひとりでも生きていれば(体力のペナルティはあるものの)何度も復活可能ということ。

立ち回りなど、いつでも確認できるチュートリアルは便利だ


 戦場の舞台となる惑星シーアは広く、美しい。どのマップを選択しても同じ構成、同じ雰囲気のものはないだろう。
 飛び回りながら行う戦闘のアクションはどれも派手で、瞬発力が高く、密度がある。見上げるようなモンスターは恐ろしく、先が見えない戦闘は続けていて面白い。連携が見事に決まった時の喜びは計り知れないものだった。しかし、これらの喜びは人間側のものだ。決してモンスター側で得られる喜びではない。
  モンスター側がつまらないということはない。モンスター側にも密度と瞬発力のある戦闘はあるし、 先の見えない戦闘はやはり面白い。人間側の連携を崩したと確信した時、あるいは密かに進化し、最終段階まで上り詰めた時、その快感は人間側ではなかなか得られるものではない。

こうなっては仲間に助けてもらわないかぎり抜け出せない

 
 両者の明確な違いは“気軽さ”に他ならない。当然のことながら人間側は互いの力を補い合うことができる。ミスがあったとしても、誰か一人さえ生きていれば良いという絶対的なルールは、どんな致命的なミスが行われても、その責任の比重を甘くする。替えの効かない能力を持つトラッパーとメディックが先立って死亡したとしても「他のプレイヤーにも責任が分割されている」という無意識の思考と「二分後にはまた復活する」という強固なルールは、人間側のプレイに対する緊張感を緩和させ、テンションを維持させ続ける。
 しかし、対するモンスター側のミスは誰のものにもならず、その責任は必ず自分に行き着く。そして死はゲームの敗北を意味する。その巨大なプレッシャー故にモンスター側の基本的な行動は「人間側との戦闘を極力回避する」というものに行き着き、誰もが安定的な戦闘を行えるまで逃げまわり、捕食を続け、怯え潜みながら進化するという選択しか選ばないし、回復手段のない現状ではその選択肢しか“選べない”のだ。
 
 この致命的な問題は見事にエボルブの魅力を削いでしまっているように感じられた。
 TurtleRockの想定していたゲームの内容は「適度に追いつき、適度に追いつかれる鬼ごっこ」であっただろうことは想像に難くない。事実それはアルファテスト当初に見られたもので、多くのプレイヤーがその素晴らしさに賛美の言葉を送ったものだ。
 しかし、現状は「ひたすら逃げ続けるモンスターをひたすら追い続ける人間たち」 でしかない。変化があったとしてもそれは「人間側の勝利」という図か「進化して強くなったモンスターがひたすら追い続け、ひたすら逃げ続けながら戦う人間たち」という退屈な図だ。

戦闘前には両者ともにブーストされるステータスをひとつ選択できる


 間違っても事態の変化を否定するわけではない。 追うものが追われるものに変わるという図式は、追われるものだった側からすれば、至極まっとうなカタルシスのあり方だ。
 問題はそこに至るまでの過程の長さと、その「逃げ続ける、追い続ける」という何も起こらない過程を両者ともに望んでいないという点だろう。

キャラクターは使い続けることで成長し、基礎能力にボーナスがかかる

 モンスター側の不満ばかりを上げたが、人間側の不満もある。それは「強制された協力関係」だろう。エボルブはL4Dシリーズであったような「突出した能力があれば孤立したプレイヤーでも生き残ることができる」という状況と「場合によっては積極的に仲間を見捨てる」という二つの状況からなる協力プレイを無視したゲームを廃するためか、孤立したプレイヤーはすぐに死亡してしまうようにできている。また他人の操るクラスの固有能力の恩恵を受けるためには必然的に固まる必要があり、またそれなくしては戦闘が成り立たないため、散らばり、効率的にモンスターを追いかけるというようなことは行いにくい。自由に行動できない感覚と、ひたすら追い続けなければならないというプレイは、人によっては強い苛立ちと、窮屈な印象を覚えるかもしれない。


第三段階まで進化したモンスターには勝ち目がない


 至極、ひいき目な感想になるが、エボルブは面白い。 つかれず離れず、という図式が見事にハマった試合は勝敗抜きで楽しかったと納得できるものだった。ゲームバランスの良さはここ最近では随一のものだ。縦横無尽に飛び交いながらの戦闘は想像以上に熱狂させられた。
 エボルブは確かに完成されているといえるだろう。しかし、それは協力プレイとしての完成度ではなく、あくまでも競技ゲームとしての完成度だ。そこに“気軽さ”はないかもしれないが、競技的な喜びや楽しみはある。それを踏まえた上での購入を望むなら、これほど歯ごたえのあるゲームはないだろう。


没入感:普通
ストーリー:普通
グラフィック:高い
戦闘の魅力:高い
リプレイ性:高い
PC負荷:高い
問題:競技ゲーム特有の息苦しさ
総合:7.5/10

 
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