放浪を続ける男は夢を見ていた。大戦後、衰退しつつもほそぼそと生きる人々の町が、突如再起動した過去の遺物たちによって崩壊し、血の海が浮かぶ様子を。男は、身を蝕む病に膝をつきながら、世界を救う手立てを、その夢の中で見た。この物語はかつての栄華を失い、多くの技術が埋没した世界で、過去を保存しながら旅を続ける放浪者(ドリフター)の物語。
Hyper Light Drifter(以下HLD)はクラウドファンディングサイトKickstarterにて立ち上がったプロジェクト。登場とともに、予定を上回る資金がまたたく間に集まった注目作品だ。数々の苦難を乗り越えながら見事発売を果たした本作品をレビューしたいと思う。
合計プレイ時間は19時間ほど。見下ろし型のサードパーソンアクションゲーム。
シングルゲーム(ただしローカルではCOOPあり)。全体の流れとしては広大なマップ自由に行き来しながら、各ダンジョンを攻略し、謎を解き、敵を撃破し、時には自身を強化しながら、モノリスの起動を目指すというもの。
基本操作は剣による攻撃、素早いダッシュ、銃による射撃の三点。
HLDは簡潔にいえばハードな『ゼルダの伝説』系列といった説明が適切だろう。前記したようにゲームの目的は各地に眠るモノリスの起動なのだが、ここに至るまでに存在するダンジョンの難易度は異様に高く、またトラップも目が回るほど多い。敵モンスターの配置もいやらしく、基本的に戦闘が“多勢に無勢”となりがちな点も難易度の高さを物語っている。トラップとモンスターの大群の合わせ技も少なくはない。雑魚がただの雑魚では終わらず、ボスモンスターのように、ある種の攻略方法抜きには無傷で済まない点も、難しさに拍車をかけている。ドリフターの体力も低い。
これらを打破するために、キャラクターには「強化」と「スキルの習得」という救いがあるのだが、劇的にプレイ感が変わるものでもなく、またスキルは連射し続けることができず、ともすればスキが大きくなり、予想外の痛手を負うことに繋がり易いため、ゴリ押しがしにくく、ゲームの攻略はもっぱらユーザーの手腕に委ねられている。
やや高すぎる難易度のように思えるが、しかしどうしてか、バランスは非常に良い。
HLDはまれに見るような、気が狂ったような難易度のゲームではない。プレイヤーの不快感にしかなり得ないような設計のゲームでもなく、開発陣の嫌がらせとしか感じないゲームでもなく、攻略方法と打開するための道がきちんと設計されている。
ゲームオーバーにペナルティはなく、死亡しても少し前の部分に戻って挑戦できるという点や、そのステージが嫌になれば、いつでもワープして始まりの町に帰ることができるといった点も開発陣の気遣いであろう。
敵も一度倒せば、“条件を満たさなければ”復活しない部分も嬉しいところだ。 回復アイテムも異様に多く、要所には必ず置かれている。
デザインは16bitフューチャーながらも味があり、敵やエフェクトがよく動く点も見ていて飽きない。ゲーム中に言語が存在せず、キャラクターの動きや、映像で物語を語らせている部分も興味深かった。退廃的な印象のサウンドも素晴らしく、先日ローカルCOOPも導入された。
難点は、ゲームの進行がユーザーのプレイスキルに頼られるため、ユーザー自体が苦手とする場面に遭遇した場合、なかなか抜け出せないことになり易いという部分だろうか。
また、ダンジョン含め、多くの隠し部屋、隠し通路が多数存在しており、これらの探索がゲームに若干の冗長を感じさせる。 気にしなければさくさくと先に進めばいいのだが、隠し通路の先には有効なアイテムに繋がる“もの”があったり、強化に使用するポイントが入手できるということもあり、なかなか無視はできない。何度もダンジョンをプレイするというリプレイ性に繋がるとは思うものの、テンポよく攻略を進めたいといったプレイヤーにはストレスとなるかもしれない。
また、物語を明確に語らないが故に盛り上がりに欠け、淡々と進行してしまうため、世界やキャラクターへの愛着を持ちにくい部分も問題のように思えた。
コントローラに限りボタン変更ができない点、キーボードとコントローラーの一長一短あるプレイ感、バグなど細かい不満点はままある。
HLDはそれでも楽しいゲームだ。当時、『ゼルダの伝説』に興奮した子供が、大人になり再び『ゼルダの伝説』をプレイしても、そこには懐かしさはあれど、喜びや興奮ややりがいはあまり感じられない。そんな大人に向けて、もう一度、あの時に感じた喜びや興奮を届けてくれるゲームがHLDではないだろうか。
没入感:低い
Hyper Light Drifter(以下HLD)はクラウドファンディングサイトKickstarterにて立ち上がったプロジェクト。登場とともに、予定を上回る資金がまたたく間に集まった注目作品だ。数々の苦難を乗り越えながら見事発売を果たした本作品をレビューしたいと思う。
合計プレイ時間は19時間ほど。見下ろし型のサードパーソンアクションゲーム。
シングルゲーム(ただしローカルではCOOPあり)。全体の流れとしては広大なマップ自由に行き来しながら、各ダンジョンを攻略し、謎を解き、敵を撃破し、時には自身を強化しながら、モノリスの起動を目指すというもの。
世界には失われた過去の遺物が多数放置されている |
基本操作は剣による攻撃、素早いダッシュ、銃による射撃の三点。
HLDは簡潔にいえばハードな『ゼルダの伝説』系列といった説明が適切だろう。前記したようにゲームの目的は各地に眠るモノリスの起動なのだが、ここに至るまでに存在するダンジョンの難易度は異様に高く、またトラップも目が回るほど多い。敵モンスターの配置もいやらしく、基本的に戦闘が“多勢に無勢”となりがちな点も難易度の高さを物語っている。トラップとモンスターの大群の合わせ技も少なくはない。雑魚がただの雑魚では終わらず、ボスモンスターのように、ある種の攻略方法抜きには無傷で済まない点も、難しさに拍車をかけている。ドリフターの体力も低い。
スキルは戦闘や探索で入手したポイントをお店で消費して習得する |
これらを打破するために、キャラクターには「強化」と「スキルの習得」という救いがあるのだが、劇的にプレイ感が変わるものでもなく、またスキルは連射し続けることができず、ともすればスキが大きくなり、予想外の痛手を負うことに繋がり易いため、ゴリ押しがしにくく、ゲームの攻略はもっぱらユーザーの手腕に委ねられている。
やや高すぎる難易度のように思えるが、しかしどうしてか、バランスは非常に良い。
銃の強化は弾薬が増え、戦闘効率が上がるので優先したいところだ |
HLDはまれに見るような、気が狂ったような難易度のゲームではない。プレイヤーの不快感にしかなり得ないような設計のゲームでもなく、開発陣の嫌がらせとしか感じないゲームでもなく、攻略方法と打開するための道がきちんと設計されている。
ゲームオーバーにペナルティはなく、死亡しても少し前の部分に戻って挑戦できるという点や、そのステージが嫌になれば、いつでもワープして始まりの町に帰ることができるといった点も開発陣の気遣いであろう。
敵も一度倒せば、“条件を満たさなければ”復活しない部分も嬉しいところだ。 回復アイテムも異様に多く、要所には必ず置かれている。
スピーディーな戦闘は攻略法も絡まり、かなりの面白さ |
デザインは16bitフューチャーながらも味があり、敵やエフェクトがよく動く点も見ていて飽きない。ゲーム中に言語が存在せず、キャラクターの動きや、映像で物語を語らせている部分も興味深かった。退廃的な印象のサウンドも素晴らしく、先日ローカルCOOPも導入された。
人類が獣人に敗北した世界 |
難点は、ゲームの進行がユーザーのプレイスキルに頼られるため、ユーザー自体が苦手とする場面に遭遇した場合、なかなか抜け出せないことになり易いという部分だろうか。
また、ダンジョン含め、多くの隠し部屋、隠し通路が多数存在しており、これらの探索がゲームに若干の冗長を感じさせる。 気にしなければさくさくと先に進めばいいのだが、隠し通路の先には有効なアイテムに繋がる“もの”があったり、強化に使用するポイントが入手できるということもあり、なかなか無視はできない。何度もダンジョンをプレイするというリプレイ性に繋がるとは思うものの、テンポよく攻略を進めたいといったプレイヤーにはストレスとなるかもしれない。
また、物語を明確に語らないが故に盛り上がりに欠け、淡々と進行してしまうため、世界やキャラクターへの愛着を持ちにくい部分も問題のように思えた。
コントローラに限りボタン変更ができない点、キーボードとコントローラーの一長一短あるプレイ感、バグなど細かい不満点はままある。
HLDはそれでも楽しいゲームだ。当時、『ゼルダの伝説』に興奮した子供が、大人になり再び『ゼルダの伝説』をプレイしても、そこには懐かしさはあれど、喜びや興奮ややりがいはあまり感じられない。そんな大人に向けて、もう一度、あの時に感じた喜びや興奮を届けてくれるゲームがHLDではないだろうか。
没入感:低い
ストーリー:普通
グラフィック:高い
戦闘の魅力:非常に高い
リプレイ性:普通
PC負荷:低い
問題:盛り上がりに欠ける部分、やや多めな隠し要素
総合:8/10