遭難中の船が難破した無人島は死んだはずの肉体がうごめくゾンビの楽園だった。主人公は、時に生存者と交流しながら、脱出方法を探っていく。
プレイ時間は10時間ほど。見下ろし型のサードパーソンビューアクション。
全体的なゲームの流れとしては、特色の違う三人のキャラクターから一人を選び、RPGライクな目標をクリアし続けるといった形になる。
妙にフレンドリーな説明はいたるところに出てくる |
How to survive(以下HTS)はサバイバルと題するだけあり、アイテムをクラフトする仕組みや、空腹を始めとする肉体の消耗もゲームデザインとして組み込んでおり、それらは美しい自然のグラフィックとあいまって、サバイバルらしさを確かに演出していた。
サバイバル主体のゲームにありがちな“リアルすぎる退屈さ”は薄く、テンポの良いシナリオや戦闘は長時間熱中することを苦だとは感じさせなかった。
ゾンビの耐久値もちょうど良いというのも、硬すぎるゾンビが多い昨今のゲームとしては良い塩梅だ。
ムービーでコミカルに分かりやすく説明してくれるコーヴァック |
HTSはアクションゲームのようで、実際はDiabloを始めとするハックアンドスラッシュと呼ばれるジャンルに近い。武器やステイタスによってキャラクターの性質が変化する部分や、アイテムを探すこと、アイテムをクラフトすることがこのHTSの最大の楽しみであり、その見つけることを楽しむという部分は、やはりアクションゲームというよりも、ハックアンドスラッシュ的だ。
しかし、ハックアンドスラッシュ的であるものの、レベリングやスキルが強くゲームを左右するということはなく、カジュアルかつシンプルなそのゲームデザインはアクションゲームのようにプレイヤーのさじ加減次第でシナリオを進めていくことが可能となっている。
そのため、ハックアンドスラッシュ的なクラフティングやアイテムを発見するという要素を重視せず、テンポよく進めていったら、クリアしていて拍子抜けした、ということも起こってしまうかもしれない。
アイテムの組み合わせを楽しむゲームだ |
奇妙なことに、ハックアンドスラッシュライクなゲームデザインでありながら、HTSでは、それほどハックアンドスラッシュ的な要素は重要視されない。スキルやレベリング、ひいては特定の武器によってゲームが劇的に変わるということはないし、レベルを上げなければ倒せない敵というものも存在しない。辛らつな言い方をすれば「レベルが上がる前とレベルが上がった後でゲーム感は変わらない」ということになるだろうか。
おそらくそれは意図的なデザインであり、病的なまでの外壁を取り除いたシンプルなゲーム感は、プレイヤーが感じるであろうストレスを極力廃した結果にある。
ある一定のレベルに達しなければ使えない武器、低レベルでは倒せない敵、レアアイテムとレア素材のために苦痛を呑んで行うルーチン、膨大な時間を消費してやっとマトモになるキャラクターとスキルツリー。それらは一時的にせよ、確かにプレイヤーに苦痛を強いる。ゲームの全体的な評価が良いものであったとしても、再びいちからプレイをするという“きがい”起こさせないし、余程の名作でもない限り、リプレイ性は間違いなく低いものだ。
HTSはそういった要素を含んだ長時間プレイを強いるものでも良かったと思う。そう思うほどによく出来ている。ただ、ディベロッパー側の思いとしては長時間に渡ってプレイヤーを縛り続けるゲームよりも、何度も新たにプレイを重ねられる気軽なゲームであってほしかった、ということなのだろう。それがこのカジュアルかつおうとつの少ないシンプルなゲーム感なのではないだろうか。
敵も豊富で画面も見やすいが、ややカジュアルすぎるかもしれない |
そのためか、キャラクターのごとの違いもそれほど見られない。よくて専用の武器があるという程度だ。
確かにそういったプレイヤーライクな考え方は素晴らしいし、苦痛をなくそうという試みは褒められてしかるべきだろう。しかし、であるならば、クラフトできるアイテムや武器はもう少し多彩で、種類の豊富さを見せるべきだったのでは、と思わずにはいられない。
当然の帰結として、キャラクターの成長を楽しめない、となればプレイヤーの楽しみは戦闘か、アイテム集取しかない。戦闘を変化させるものは装備品やアイテムであるということを考えれば、より一層、アイテムクラフトと探索への比重は大きくなる。それなのにも関わらず、 HTSに出てくるアイテムや装備品の総数は少なく、それらは“ユニーク”ではない。
キャラクターごとの差異のなさも、キャラクターの成長を間違えた時のストレスや、自分好みでなかった……などという「個体差によってゲームの進退が変わる状況」を避けた結果かもしれないが、キャラクターごとに楽しみ方が変わる程度の違いはあっても良かったのではないかと思う。
もう少し成長を楽しめる作りでも良かった |
全体としては惜しい印象が拭えないものの、確実に“でき”は良く、また初心者にも分かりやすい作りと、絶妙な仕組みで合致するプレイ中のヒントやキャラクター達は上質で、楽しいものだった。
チャレンジブルなゲームモードもあり、オンラインで友達と遊ぶこともできる部分や、デフォルトで日本語表記が入っている点も嬉しい。
若干、周回プレイを前提としている不親切さがあるものの、初心者に向けたハックアンドスラッシュの入門書としては最適なゲームといえる。もしもそういったジャンルに手を出したことがないというユーザーがいるのなら、まずこのゲームを手にとってみてほしい。
没入感:普通
ストーリー:やや高い
グラフィック:高い
戦闘の魅力:やや高い
リプレイ性:普通
PC負荷:高い
問題:クラフトできる装備のバリエーションの少なさ、
キャラクターの成長がプレイにまったく寄与しない点
キャラクターの成長がプレイにまったく寄与しない点
総合:7/10