次回作が書けない悩みを抱えながら、小説家アランは暗所恐怖症の妻と静かな湖の見える田舎町に旅行に来ていた。旅の途中、些細なすれ違いから二人は口論になり、アランは宿を飛び出す。宿の外で後悔し、謝ろう決心したアランの耳に妻の悲鳴が轟いた。二人は気づかないうちに闇の力に飲み込まれつつあった。
プレイ時間は20時間ほど。サードパーソンビューのシングルホラーアクション。
全体的な雰囲気としてはサイレントヒルが近い。シナリオ内でもスティーブン・キングを引用していることから分かるように、理不尽な現象によるホラーという展開が終始続く。
意外にもホラー要素は少ない |
ストーリー上に何度も登場する闇の力に侵された元住人は、あらゆる攻撃が通用しない。銃を撃とうが、車で跳ね飛ばそうが死ぬことはない。彼らに銃弾を当てるにはまず、ライトの光を使って、その体を覆っている黒い霧を取り除く必要がある。闇を取り払うことで初めて、彼らは攻撃を受け付けるようになるのだ。
この一見、わずらしくも思える工程がプレイに濃い緊張感を与えている。四方からにじり寄ってくる敵に対して、バッテリーの残量を気にしながら、光を当て続け、早く早くと焦りながら戦う戦闘は最後まで飽きることがなかった。一度に、一人ずつしかライトを向けられないのも戦いに緊張を与えてくれる要素だ。光の道筋を照準として使っているなどゲームらしさを取り除きながらも、上手く作りこまれている。
アランの異様な体力の低さと、ひ弱さもプレイの緊張感に拍車をかけてくれている。
弾薬が底を尽き、命からがら街灯の下に逃げることができた時の喜びは計り知れない。
光と闇の描写は素晴らしい |
アランも決して弱い主人公というわけではない。一般的なゲームの主人公並に武器は即座に使ってみせるし、どんな攻撃も少しすれば回復する。ただ、それにも増して敵は手強く、あの手この手でアランを倒そうとしてくるだけだ。
彼らは集団でアランに襲いかかってくる |
ストーリーはアランが妻、そして一週間分の記憶を失ったという状態を、海外ドラマの“てい”で進んでいく。シナリオの節目ごとに「前回の続き」といった調子でおさらいが始まる部分など、馴染み深いプレイヤーも多いかもしれない。
キャラクターも豊富で、それぞれが思惑を抱えながら進んでいくなど、手抜き感がなく、よく考えられている印象を受ける。
失った一週間の間に、何があったのかということをマップ中に配置されているアランの原稿から読み取っていく点は、町や人々にじっくりと侵食していく異変を直に感じられるようで、とても興味深かった。
これほど入念に練られたシナリオに不自然なく組み込まれているシステムも珍しい。
同時に惜しいと思う点はそのシナリオでもある。
途中までテンポよく進んでいくものの、最後の段階から物語りを収束させるために、かなりの無理をしているように感じられた。いくつかの関係を匂わせたまま、放置しているキャラクターはまだマシな方で、今までほとんど姿の見えなかったキャラクターが突如として表れ、当然のごとくアランがそれを受け入れてしまう場面はいささか強引だった。
形だけのボス戦が終わった後の唐突に終わりを告げるシーンは、それまでが順序良く進んでいただけに、半ば呆然とした。
説明不足を補うために用意された「特別編」は退屈極まりない。目的やストーリーが明確に定まっておらず、先の見えない道を延々歩かされているかのような徒労感はアランウェイクとしての本来の楽しみを大いに奪ってくれた。
半端さが隠し切れない精神世界 |
FarCry3でも同様のことを感じたが、精神世界の導入はあらゆることが許され、あらゆる物語りに二面性や深みを持たせることができるかもしれない。しかし、それは“作り手”としての視点であったり、価値観であって、“プレイヤー側”に立った価値観や視点ではない。
そのギミックが楽しさに繋がるのかどうかということを制作側は、もう少し真剣に考えるべきだろう。
総評としては傑作に成り損ねた秀作といったところか。
没入感:普通
ストーリー:やや高い
グラフィック:やや高い
戦闘の魅力:高い
リプレイ性:低い
PC負荷:高い
問題:解答を見いだせないまま終わったストーリー。
総合:7/10